Alpine DSP H-600 の実装とインプレッション

DSP Alpine PXA H-600
私は背筋がぞくっとするような50〜60年代のジャズボーカルやアルトサックスの再生を目指していますが、その目的にはH510よりもH600の方が合っているとアドバイスを受けました。そこで、H600をオークションで入手してH-510は手放しました。

DSPの設置方法 HUとBOSEアンプの間にDSPを入れます
配線概念図 2芯シールド線でバランス配線をします
分岐ハーネスの製作 DSPへの信号を取り出すハーネス
自動調整機能 H-600の目玉機能です
サブウーファの改造 BOSEのサブウーファを使用する方法
   
RON信号 H-600の電源コントロール信号
オルタネータノイズ対策 ノイズ根絶には苦労しました
不思議な現象 BOSE仕様のHUには謎があります
   
ATENZAのトップページに戻る  

DSPの設置方法

アテンザのBOSEシステムは下記の構成になっています。
注意するのはBOSE AMPへの入力は4本なのに出力ではサブウーファ出力が増えて5本になっている点です。オリジナルのBOSEシステムではHUからの4つの出力からBOSE AMPの中でサブウーファ出力を生成しています。

ここにDSPを組み込むときは下図の構成に変更します。

簡単に言えばHUとBOSE AMPの間の配線を切ってDSPを割り込ませる形になりますが、サブウーファ(SW)の扱いには注意が必要です。

DSPを使用した場合にはオリジナルと異なりHUからのフロント出力2本(FR/FL)からDSPがサブウーファ出力を生成します。

このため最も望ましいのは下の図のようにBOSE AMPからパワードサブウーファへの配線を切ってDSPの出力をパワードサブウーファの入力に接続することです。

このページのTOPに戻る

配線概念図

HUからDSPまでとDSPからBOSEメインアンプまでの配線はノイズ対策のために2芯シールド線を使用しています。 またシールド外被はDSP側でのみグランドに落とし、信号が流れないようにしてシールド効果を高めています。

バランス信号は2芯シールドの中で逆相の信号となるため、外部への漏洩、外部からの同相(コモンモード)ノイズの混入を打ち消すことができます。

しかしDSP側はアンバランス入力のためバランス→アンバランス変換(平衡→不平衡変換)しなければなりません。

今回はこの変換に市販の信号線ノイズフィルターに入っていたトランスを使用しました。しかし音質を考えるとあまり使用したくないパーツなので変更が容易なようにコネクタで取り替えられるようにしました。
現在用意してあるのは元の回路に戻すための部品(ハーネス)だけですが、将来はOPアンプを使用したバランス→アンバランス変換器を作成することも考えています。

DSPからBOSEメインアンプへの配線も同様に2芯シールドを使用しています。メインアンプはバランス入力なのでIN-をDSP側でグランドに落としています。このDSP→メインアンプ部分はDSP(助手席下)→HUの裏側→メインアンプ(運転席下)と非常に長い配線になりますが、ノイズが乗るような問題は発生していませんので当面このままにしておく予定です。

分岐ハーネスの製作

HUからの出力に割り込ませるために最適な両端にコネクタのついたハーネスがイエローハットから販売されています。他社から販売されているものは車両側はコネクタになっていますがもう一方のHU側は先バラのギボシ端子になっているものばかりで使用できません。

実装を容易にするために配線は秋葉の小柳出(おやいで)電気で購入した安くて(80円/m)細い 軟質シールド線を使用しましたがシールドも編んでなく芯線2本もよりあわせてないのでおすすめできません。芯線がよってあってシールドがしっかりと編んであるものがよいでしょう。ノイズの乗り方を調べるための実験用だったので安いものにし ましたが結局そのまま使用しているのでもっと良いものにしておけばよかったと後悔しています。

イエローハットブランドの「電源取りだしコネクタ B2-A」を使用します。
左側のコネクタがHUに差し込まれます。
右側のコネクタにはHUから抜いた車体側のコネクタが差し込まれます。
4本の線が出ています。このハーネスは本来これらの線を引き出すためのものです。これらの線は本来の目的に使用することもできます。
上から順に
  バックアップ電源(常時ON)
  イルミネーション電源
  車速S
  アクセサリー電源
HU側(HUに差し込む)コネクタのアップです。
車体側コネクタのアップです、HUから抜いたコネクタをここに差し込みます。
   
一回路分の配線を始めます。これはFL(フロント左)の配線です。
バランス信号は3本ですが、グランド(シールド)はDSP側でのみ配線するので信号+と信号−の2本を切断します。
バランス信号ですから2芯シールド線を使用します。
ハーネス側ではシールド外被は使用しません、信号線2本を半田付けして熱収縮チューブで絶縁します。極性に注意してください。
2本をビニールテープでまとめ、シールド線と同じ太さにします。
熱収縮チューブでシールド線に固定します。
最後にもう一度全体に熱収縮チューブをかぶせます、線が細いことと振動が多いために念には念を入れて固定します。
ミスを防ぐため各配線にはタグをつけておきます。
HUからは4チャンネルの出力が出ていますがDSPにはFL、FRの2チャンネルのみを加えます。RL、RRの出力は使用しません。
DSPからBOSEアンプには4チャンネルの信号が加わります。

DSPから見て入力2本出力4本の合計6本の配線になります。

半田付けしたところに力が加わらないように遊びをもたせてタイラップで確実に固定します。
完成したハーネスです。HUからDSPまでの長さに余裕を加えた長さにします。
試作段階の写真なのでDSP側がすべてRCAプラグになっていますが、実際はDSPの入力2チャンネルは下の写真のコネクタに取り替えてあります。
  DSP入力 2ch :専用コネクタ
  DSP出力 4ch :RCAプラグ
上の写真のRCAプラグの代わりに取り付けたコネクタです。
シールド外被はこちら側で配線します。
FR、FLそれぞれの信号+、信号−、グランド、合計6本となります。
HUからのバランス出力をアンバランス出力に変換する変換器です、市販の信号線ノイズフィルタを改造しました。
左のコネクタ にHUからのバランス出力2チャンネルが接続され、上のRCA出力がDSPの入力に接続されます。
変換器を実装した状態です。
普段はシート下に突っ込んであります。
RCAコネクタをDSPの入力に接続します。
トランスを使用しない場合はこのハーネスに差し替えるとアンバランス配線になります。この場合ノイズが乗ります。

N/A


トランス式の音に不満が出た場合はOPアンプを使用したバランス→アンバランス変換器を作成する予定です。
 
   

このページのTOPに戻る

自動調整機能

H-600のセールスポイントの自動調整機能を試してみました、購入するまで知らなかったのですがこの機能を使用するには制約があります。

サブウーファ機能がONになっていてH-600にサブウーファが接続されていなければならない。

これが実はAtenzaのBOSEシステムでは大問題になります。

上の「DSPの設置方法」の項で説明したようにサブウーファ出力はBOSE AMPの内部で生成されます。しかしH-600のサブウーファ出力に接続されたサブウーファでなければ自動測定に使用できません。ここに何もつながずに測定を始めてもサブウーファ出力から出した音が拾えないので測定を開始せずに終了してしまいます。

正しい方法は「DSPの設置方法」の項の下の図のようにH-600のサブウーファ用出力をBOSEのサブウーファ(パワーアンプ内蔵)の入力に接続するのですが、まだ うまく動作していないのでその方法はとれません。

次善の策として小型モニターと自作の小型アンプをパワードサブウーファの代わりとして使用しました。もちろん本物のサブウーファとは特性が違うので正しい補正はできませんが、と りあえず試してみました。
調整後は元のBOSEアンプ→BOSEサブウーファの状態に戻しています。

 

調整風景

マイクはこのように取り付けました。
   
自動調整中です。

結果は素晴らしいものでした

偽サブウーファを使用したので、多くを期待しなかったのですが調整後の音は各楽器の定位がくっきりとして音の濁りも減りました。また低域がほどよくブーストされて豊かになり音に厚みが出ました。
この違いは大きく、補正ありと無しを切り替えると補正無しは音が散漫で荒れています。以前は この音でも結構いい音になってきたと自己満足していたのですが・・・
半分ごまかして行った結果がこれですから、正しい方法で実施したときどれほどの効果があるのか大変楽しみです。

ドアのデッドニングなどで改善してきた音質ですが、この時点でCDとHDDプレーヤ(WMA/128kbps)の音の差が目立つようになって来ました。カーオーディオ程度の音質ならポータブルHDDプレーヤ で十分と思 い、せっせと15GB分の音楽を入れたのですが、やはりCDの方がよいとなると6連CDチェンジャーで頻繁に入れ替えしなければなりません。
現在のiPodにはApple Losslessのコーデックが入っているので圧縮率50%(40〜80%)ほどで可逆コンプレッションが可能とのことです。単純計算ですが40GBモデルならアルバム1枚 が300MBになるとして130枚以上(1,500曲程度)入ることになります。これならお気に入りの曲を入れるには十分です。

FMはAM並みの扱いになって、本気で音楽を聴くメディアではなくなってしまいました。

このあたりは私の音楽を聴く姿勢が変わって音マニアになってきたのかも知れません、そうならばあまり良いことではありませんが

サブウーファの改造 / 進行中

上の実験は大成功だったのですが、DSPからBOSEサブウーファを ドライブする方法は自動調整するととんでもない音になってしまい、いまだにうまく動作していません。

サブウーファ 改造ページへ(工事中)

このページのTOPに戻る


RON信号

H600にはRON(Remote ON)というコントロール入力があり、ここに+12Vを加えるとH600の電源が入ります。HUをONにした時に+12Vが出る端子があればH600も連動するのでHUをOFFにしたときは音がでないようになり、オルタネータノイズの影響を減らすことができます。ネットで探してみたところHUから[Switched+12V]あるいは[Amp Remote]と呼ばれる信号線が出ていたのでRONをここにつないでみました。
残念ながらこの信号は期待したものではなく、HUからポップノイズが出てスピーカを壊さないようにするミュート信号のようでした。イグニッションがONになってしばらくしてHUが安定すると+12Vが出ており、HUをOFFにしても+12Vが出ています。
しかしAccよりはベターなので今はこのラインに接続しています。

HUの内部から相当する電源ラインを保護抵抗を介して引っ張り出せばよいのですが面倒なのでやっていません。

このページのTOPに戻る


オルタネータノイズ対策

最初は下の図のように配線したのですがオルタネータノイズが混入してしまいました。HUをOFFの状態でDSPのボリュームレベルを上げていくと20位から聞こえてきて、最大の35では気になるレベルになります。
音楽再生時はマスクされるのでほとんど気にならないのですがHUをOFFにしていると耳につきます。

DSPの入力への線を外すと入らなくなるので、入力ラインが拾っていることが わかりました。

下の囲み記事のように悪戦苦闘しましたが、結局配線概念図のようにトランスを使用したバランス入力とすることでオルタネータノイズを根絶することができました。

オルタネータノイズを消すまでは下のようないろいろな対策を試しました。

対策1.ラインノイズフィルター

DSPの+12VラインにKenwoodのノイズフィルターを入れてみましたが、効果はありませんでした。

対策2.シールド外被のアース

HUからDSPに接続するシールド線の外被はDSP側のRCAプラグでのみグランドされています。これをHU側でもグランドしてみましたが、変化はありませんでした。

対策3.アースポイントの変更

DSPのアースポイントをサイドブレーキ部分から他の場所に変更してみましたが、線を長くするとかえってノイズが増えるだけでこれも効果がありませんでした。 また別にアースラインを引いたりもしてみましたが、やはりノイズが増えはしても減ることはありませんでした。

対策4.信号線のアース

HUのバランス出力のうちOUT-は接続されていないのでDSP側で抵抗でグランドに落としてみました。シールド線の中の信号をバランスさせてノイズ消去を期待したのですが、VR(可変抵抗器)で値を変更してみてもノイズは減りませんでした。

対策5.信号線ノイズフィルター

市販のRCA入力に入れるノイズフィルターを使用してみましたが、音声がまともに通りませんでした。

回路を調べてみると上図のようになっていました。私のDSP接続の回路ではこのままでは入力回路が閉じないので音が通らなかったわけです。
そこでクリップコードで仮配線してバランス→アンバランス変換器として使用してみるとオルタネータノイズがきれいに消えたので、この方法で対策することにしました。

このページのTOPに戻る


不思議な現象

設置後すぐに調整箇所はフラットのままで動作テストしたのですが、音が豊かになったので驚きました。オーディオには全く興味がない妻に「音が良くなったけれど何か(=無駄遣い)したの?」と聞かれたほどで す。

DSPという余計なものを入れたのに音が向上するというのは考えにくいのですが、音につやが出て、低域も伸びてそれまでのドンドンから腹に響くズンズンに向上しました(ついでに車体にも響いています)。マニュアルでは周波数特性は20〜20kHzまで±1dBとなっていて特に味付けはしていないようです。

[考察1]
従来はHUのボリュームを16ぐらいまでしか上げませんでしたが、H-600を入れた後はマニュアルに従って調整した結果、HU側を25ぐらいに上げDSP側で従来と同音量にしています。HU内の増幅段はこのあたりが一番おいしい領域なのかもしれません。そうならばDSPでなくてもアッテネータ(減衰器)を入れるだけで音質が改善される理屈になりますが・・・

[考察2]
標準ではHUからFR/FL/RR/RLの4つが出力されていますが、H-600にはFR/FLのみを入力してH-600の中で前後に振って4出力にしています。
BOSEシステムはアテンザ用にチューニングしているとの触れ込みですが、HU内で調整している可能性があります。音の追求という点ではメインアンプで調整するのがベストですが、 コスト面ではメインアンプ部は共通部品として色付けをせずにいろんな車種で使いまわしする方が合理的です。
この場合ツイータの無いリアへの出力 はフロント出力と特性が違っている可能性が高くなります。
「BOSEチューニング」がスピーカの選択とサービスホールをウレタンフォームでふさぐ程度のものならばこの推理は外れています。

[考察3]
BOSEのサイトに行ってみたところBOSEのオートモーティブ・サラウンド・サウンドシステムの一つサラウンドステージ・プロセッシング回路は、音響心理学を駆使して車の中のどこにいてもベストなサラウンド効果が得られるシステム・・・なのだそうです。

なんだかゲーム脳の解説を読んでいるような気分になりましたがいろいろと目新しいシステムを導入して成功を収めてきたBOSEなのでトンデモ学説とは違うのでしょう。普通のスピーカ以外で生き残っているのはコンパクトCDラジオ(←これは大変よくできています)だけという気もしますが・・・
このような効果を出すために全てのスピーカの音を再配分しているようですし、当然位相もぐちゃぐちゃいろいろと操作していると思われます。DSPがこれらのあまりありがたくない効果を少しでも減らしているのであればドライバーズシートでの音は改善されているのでしょう。

[結論]
なんだかよくわかりませんが
音が悪くなったわけではないので深く追求はしていません。

このページのTOPに戻る


ATENZAのトップページに戻る

Copyright 2004-2005 TICKETS All Rights Reserved
これらの情報を使用した結果についての責任は負いかねます自己責任でご使用ください。
これらの情報は個人で使用される範囲において自由にご使用ください。
有償、無償に関わらず頒布目的での使用は禁止いたします。